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意外と簡単|会社設立後に本店と別の管轄地内に支店を設置する方法

そろそろ会社も大きくなってきたし、事業規模を拡大したいと考えている方もいると思います。

 

しかし実際に、いざ事業規模を大きくしようとしても何から行っていいのかわかりませんよね。

 

手法としては

新たな会社を設立する

支店を設立する

などが挙げられますが、今回は、1つの方法である

「支店設立」(本店とは離れた場所で事業を行う場合

について解説していきます。

 

 本記事の内容

・支店設立のメリットとデメリット

・支店設立の方法

・支店登記に必要な書類と費用

 

本記事は5分程度で読むことができます。

 

会社を既に設立している人が本店と離れた場所で支店を設立する方法について解説しています。

 

この記事を読んでいただければ、意外と簡単に支店が設立できることが分かり、事業拡大への糸口を見出すことができます。

 

1 支店とは

支店とは

ある範囲において会社の営業活動の中心となり、本店から離れ独自に営業活動を決定し、対外的取引をなしえる人的物的組織のことをいいます。

 

支店を設置した時は、

支店登

というものが必要になります。

これは、会社法でも明確に定められています。

 

ただし、会社法上、

「どんなものが支店とみなされるか」

は厳密に定義されていないため、担当者の詰所、営業所、出張所のような拠点は

支店として扱わないということで、支店登記は不要です。

 

~補足~

とても紛らわしいのですが

支店登記をしなくても支店の名称を使用することは可能です。

 

後程、番外編で少し触れますが、必ず支店登記をしなければならないのは

本店とは別の拠点に支配人を置きたい場

となります。

 

もちろん支配人を選定しなくても支店登記をすることはできます。

 

今回は前提として、支配人を選定するしないに関わらず支店登記を行うことを前提に記事を書いていきます。

 

 

2 支店とするメリット・デメリット

メリット デメリット
実務面 公的な入札など、地元企業しか受注できない公共事業などの受注ができるようになる。

支店近くの信用金庫や信用組合などの地元密着型の金融機関から融資を受けることが可能となる。

支店周辺で、1つの企業として認識してもらえる。

会計方法が本店集中会計制度と支店独立会計制度の2つがあり、煩雑にはなる。※本支店会計比較図 参照

社会保険や労働保険などの手続きが必要。

法務面 契約を支店で取り交わすことができるので、対外取引が迅速化される。

本支店間で、協定などを設けて、権限の範囲などを明確化できる。

支店の設置には登記費用がかかる。

支店にも雇用保険や労働保険を整備しなければならない。

定款、株主総会議事録(株式会社の場合)、計算書類は支店にも備えておかなければならない。

税務面 - 法人地方税が複雑になる。均等割はそれぞれの管轄へ、所得割は按分で納税。

 

※本支店会計比較図

メリット デメリット
本店集中会計 本店が、本支店すべての経理を行う集中運用の会計方法です。

支店はすべての会計処理を本店に報告し、本店が本店の分と支店の分を合わせて経理を行います。

支店は、受け取った請求書などの証憑書類をすべて本店に送付。

支店は記帳を行わないため、支店に帳簿はありません。

集中運用によって経理を簡潔に行える 本支店それぞれの業績を把握できない
支店独立会計 本店と支店が独立して会計処理を行う方法です。

支店自体も記帳してきちんと経理業務を行うため、支店にも帳簿があります。

本支店それぞれの業績を把握できるため、経営分析に役立てられる ・本店に業務負担が集中する

・連絡ミスによる未達が生じやすい

・決算や財務諸表の作成において内部取引の調整を行わなければならず、経理が難化する

 

3 支店設置の方法

 

支店設置の方法は、

支店設置の登記申請

が必要となります。

 

支店設置の形態はタイミングと支店の管轄地によって少し異なります。

 

支店の場所
会社設立に支店も設置 本店の管轄地内 本店の管轄地とは別
会社設立に支店を設置 本店の管轄地内 本店の管轄地とは別

 

このような、パターンが考えられますが、今回は赤字のパターンで考えていきます。

基本どのパターンでも流れは一緒になります。

 

4 支店設置の2ステップ

支店設置は、決議して登記この2ステップだけです。

ひとつずつみていきましょう。

 

step
1
支店設置を決定するための決議をする。

 

支店設置の登記申請をするためには、その前提として、支店設置に関する事項(具体的な設置場所や設置時期など)を、適切な決議機関で決定する必要があります。

 

そして、当該決議機関の議事については、議事録を作成しなければなりません(取締役会議事録など)。

 

 

  • 取締役会を設置している会社

→ 取締役会の決議 (取締役会議事録)

 

  • 取締役会を設置していない会社

→ 取締役の過半数の一致 (取締役による決議書など)

 

step
2
支店設置の登記をする。

 

会社が成立した後(設立後)に新たに支店を設置した場合には、

 

本店所在地を管轄する法務局

当該支店の所在地を管轄する法務局

 

に対して、その旨の登記を申請しなければなりません。

 

登記は申請してから完了まで、おおむね1週間~2週間程度を目安としましょう。

 

 

5 支店登記の申請先、申請期間、申請書類

  • 申請先

先程挙げたように、登記は法務局で受け付けています。

ここでは、本店所在地と支店所在地、それぞれを管轄する2か所の法務局に登記申請を出す必要があります。

 

本店所在地の法務局あての分

支店所在地の法務局あての分

 

を1通の申請書で一括して、(これを本支店一括登記申請と呼ぶ※)

本店所在地の法務局に申請します

 

※ 従来通り、本店所在地の法務局あての申請書と、支店所在地の法務局あての申請書を各別に作成し、各申請書を各所在地の法務局に申請することもできます

 

  • 申請期間

本店所在地の法務局への登記申請は

支店設置の日※から2週間以内 ➡法律から読むと3週間?

にしなければなりません。

※ 支店設置の日とは、現実に支店を設置した日であって、取締役会等で支店設置の決議をした日ではありません。

通常は、議事録に記載の設置の日となります。

 

  • 申請書類

法務局へ登記申請をする場合には以下の書類が必要となります。

必要書類

  • 登記申請書
  • 登録免許税納付用台紙
  • 支店設置に関する事項を決議した議事録
  • 委任状(代理人によって申請する場合)

※ 登記すべき事項は、登記すべき事項を保存したCD-R等またはOCR用申請用紙による提出も可能です

 

6 支店登記にかかる費用

支店登記をするときにも費用がかかります。

本店と管轄の異なる支店を設置する場合は、本支店一括登記申請となり、2種類の費用がかかります。

 

登録免許税

・本店所在地の法務局分 60,000円(設置する支店1箇所につき)

・支店所在地の法務局分  9,000円(設置する支店個数にかかわらず、支店所在地の法務局1箇所につき)

 

登録手数料

支店所在地の法務局1箇所につき300円の手数料がかかります。

よって

本店と管轄の異なる支店を1箇所新たに設置する場合

計 69,300円

を納付することになります。

 

自分で申請せずに、司法書士に依頼するのであれば、さらに費用がかかります。

 

7 (番外編)支配人の印鑑登録が実用的

 

支店登記をしていると支店に支配人をおくことができます。

 

支配人というとホテルにいるコンシェルジェのような人を思い浮かべますよね。

 

会社法11条1項では、支配人を

「会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する者」

と定義しています。

 

要するに

会社に代理権を認められていて、従業員の選任や解任、さらには法律行為や裁判上の行為ですら行うことができる権限を有しているということです。

ただし、支配人の代理権が及ぶ範囲は定められた営業所(支店)に関わることのみです。

 

支配人と代表取締役の違いについて

 

支配人は定められた営業所に関わる代理権を認められていて、代表取締役と同じような権限を持ちます。

では、支配人と代表取締役は何が違うのでしょう?

 

会社での立場 権限を有する範囲
代表取締役 使用人(従業員)を使用する立場 会社に関することすべて
支配人 使用人(従業員)の立場 登記されている営業所(支店)のみ

 

この表のように支配人はあくまでも使用人という立場であるということで整理しておくと分かりやすいです。

 

 

支配人の登記について

 

支配人を選任した場合、登記をしなければなりません。

 

会社法第918条では、

「会社が支配人を選任し、又はその代理権が消滅したときは、その本店の所在地において、その登記をしなければならない」とされています。

 

登記事項は

支配人の氏名及び住所

支配人を置いた営業所

 

ここで注意が必要なのは、支店に支配人を配置した場合も

本店の所在地を管轄する法務

で登記をしないといけないということです。

 

支配人の登記には

申請件数1件につき

30,000円

登録免許税がかかります。

 

そして、支配人は法務局で

印鑑登

を行うことも可能です。

 

印鑑登録を行うことで

支店でも印鑑証明書が必要な業務を行うことができます。

 

そういった実務上の面で、支店に任せられる業務も増えますが、その反面支配人の権限が強くなりすぎるということもあるので総合的に判断しましょう。

 

〇事業所(支店)が以下に当てはまる場合には、労働保険・雇用保険・社会保険の適用事業場となります。

労働保険・雇用保険

場所的に他の(主たる)事業所から独立している。

一定期間継続し、従業員が複数人常駐している。

人事、経理、経営または業務上の指導監督、働き方などにおいて(ある程度)独立して行っている。

 

社会保険

採用、勤怠管理、給与計算など独立して人事管理を行っている。

 

労働保険について

 

〇支店で労働保険の保険関係を成立する際の手続きと期限は? (一般的な業種)

期限 提出先
労働保険 保険関係成立届 10日以内 労働基準監督署
労働保険 概算保険料申告書 50日以内 労働基準監督署

 

〇支店の労働保険の保険関係を本社に一括する手続きと期限は?

(労働保険(労災保険)の適用事業場となる場合において、給与計算を本社などで行っている場合は、労働保険継続事業一括申請の手続きを行うことによって、労働保険料などの取り扱いを本社で一括して行うことができます。)

労働保険 継続事業一括事業申請書

→ 労働保険保険関係成立届の提出と同時に労働基準監督署へ

 

雇用保険について

 

〇支店で雇用保険の適用事業所を設置する際の手続きと期限は?

(従業員が他の支店から転勤してくる場合)

期限 提出先
雇用保険 適用事業所設置届 10日以内 ハローワーク
雇用保険 被保険者転勤届 10日以内 ハローワーク

 

(従業員を新規に雇用する場合)

期限 提出先
雇用保険 適用事業所設置届 10日以内 ハローワーク
雇用保険 被保険者資格取得届 10日以内 ハローワーク

 

社会保険について

 

〇支店で社会保険の新規適用を行う際の手続き・期限はいつまで?

―法人設立後、すぐに必要になります。

 

(従業員が他の支店から転勤してくる場合)

期限 提出先
健康保険・厚生年金保険 新規適用届 法人設立後、10日以内 年金事務所
健康保険・厚生年金保険 資格喪失届 新規適用届の提出前 年金事務所
健康保険・厚生年金保険 資格取得届 新規適用届と同時 年金事務所

 

※他の事業場での資格喪失手続きを行ったうえで、資格取得手続きを行います。

 

(従業員を新規に雇用する場合)

期限 提出先
健康保険・厚生年金保険 新規適用届 法人設立後、10日以内 年金事務所
健康保険・厚生年金保険 資格取得届 新規適用届と同時 年金事務所

 

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